部隊長は新兵たちに装備品を受け取った後、規則に従って私物を整理するよう指示した。皆は散らかった物に気を取られていたが、タンだけは隅に座り、鉛筆を片手にノートに熱心に絵を描いていた。
部隊を視察していた 政治将校のナム中尉は、タン中尉の異様な行動に気づき、立ち止まってタン中尉の「作品」を興味深そうに眺めた。白い紙の上には、威厳がありながらも親しみやすい風貌の兵士の姿が鮮やかに浮かび上がっていた。鉛筆で描かれただけのシンプルな線だったが、顔には愛らしいほくろがあっても、誰もがナム中尉の姿だと分かった。
イラスト:クアン・クオン |
ナム中尉は思わず笑い出した。「タン同志!内部事情を整理して絵を描いてみろ!」タンは驚いて、慌ててノートを閉じ、背中にしまい込んだ。顔は真っ赤になった。「上官に報告…わ…すぐに仕事に行きます」「誰を描いているんだ、同志?」ナム中尉はノートを取り上げ、よく見てから、思わず笑い出した。「魂がこもった絵だ!どこで絵を習ったんだ、同志?」
タンは恐る恐る、自分は美術学生で、軍隊に入隊するために筆を置いたばかりだと告白した。ナム中尉は、少し考え込むような目でそれを聞いていた。
その日から、タン・コムは一躍小隊の「有名人」になった。暇さえあれば、ノートとペンを取り出して絵を描いた。自習中に居眠りするビン二等兵のユーモラスな似顔絵もあれば、フン軍曹が真剣な面持ちで兵士たちに指揮訓練を指導している姿もあった。シンプルなスケッチだったが、それぞれの人物の気質や個性が見事に表現されており、部隊の皆から愛されていた。
ナム中尉は、タンが軍隊生活に対して繊細でユーモラスな視点を持っていることにしばしば気づいていました。そこで、部隊の空間を壁画で「リフレッシュ」するというアイデアが浮かびました。壁画のある部隊は新しい雰囲気を醸し出し、将校や兵士たちに前向きなエネルギーをもたらすと彼は考えました。
上官の承認を得て、ナム中尉はタンに部隊の訓練場に「同志愛」をテーマにした大きな壁画を描く任務を与えた。タンはこの任務を熱心に引き受けた。分隊全員がタンを手伝うために集まった。絵の具と筆を用意する者もいれば、モデルとして立つことを志願する者もいた…
完成当日、ナム中尉と将兵全員が集まり、作品を「承認」した。絵は実に印象的だった。青い空を背景に、屈強な兵士たちが、確かな手腕で共に困難を乗り越えていく姿が描かれていた。皆、しなやかで力強い表情をしていた。ナム中尉は満足そうに頷いた。「素晴らしい!この絵には、仲間意識とチームスピリットがはっきりと表れています」。タンは少し恐縮した表情で頭を掻いた。「はい、ありがとうございます」。しかしその時、考え込むような表情で絵をじっと見つめていたビン二等兵が突然叫んだ。「報告します、二等兵!何か…ちょっと変なのが見えます」。ビン二等兵は絵の隅を指差した。そこには、木の下で小さな包みの横に座り、休んでいる兵士の姿があった。ビン二等兵は不思議に思った。「なぜこの兵士はこんなに大きなもち米の包みを持っているのだろう?」
驚いた全員が数秒間沈黙した後、大笑いしました。タン氏は顔を赤らめ、恥ずかしそうにこう説明しました。
― 署長と同志に報告しろ。あのもち米の包み…あのもち米の包みはノートだ。
- あらまあ!ガックフルーツ入りのもち米かと思った!だって…お母さんが作るもち米と同じ赤い色してるじゃない!
再び大きな笑い声が響き渡った。「同志愛」の壁画は訓練場のハイライトとなり、新世代の兵士たちの誇りとなった。それ以来、タン・コムは部隊全体から「兵士の画家」という愛称で呼ばれ、休日や会議の際の壁画制作や、毎週の掲示板の楽しいコーナーの描画といった任務も与えられ、軍隊生活に爽やかな笑いと彩りをもたらした。
人民軍によれば
出典: https://baoangiang.com.vn/goi-xoi-gac-cua-hoa-si-thang-a423612.html
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