ゲンナジー・シルヤエフ氏(中央)は銃撃犯に待ち伏せされ、「卵王」が運転していたBMWに向けて2発の銃弾を発射された(写真:テレグラフ)。
2023年末のある日、ロシア西部ヴォロネジ州最大の養鶏場トレティコフの経営者、ゲンナジー・シルヤエフさん(59歳)は、車で帰宅途中、見知らぬ男に待ち伏せされた。男は2発の銃弾を発射したが、シルヤエフさんは命中しなかった。
警察は殺害の動機をまだ明らかにしていないが、マッシュのテレグラムチャンネルは、事件は「シルヤエフ氏による価格引き上げに不満を抱いた地元住民」によって引き起こされたと報じた。当局は2日前、シルヤエフ氏と他の2人の卵生産者に対し、卵の価格引き上げの疑いで捜査を開始していた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、卵の価格が上昇した理由は、現在のロシア経済の特徴である多くの要因が重なったためだと指摘した。
特に、西側諸国の制裁により、これまで欧州から輸入されていた農業機械のサプライチェーンが混乱し、ロシアの養鶏産業に悪影響を及ぼしている。
ルーブル安は飼料や獣医製品の輸入価格を押し上げ、労働力不足により一部の供給業者は農業従事者不足に陥っている。一方、政府支出の急増は賃金を押し上げ、食品などの需要を押し上げている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、これらすべてがエッグショックをロシアの戦時経済に蓄積しつつある不均衡の現れとしている。
ここ数ヶ月、主食である卵が不足し、価格が高騰しているため、ベルゴロドからシベリアに至るまで、ロシア国民は卵を買うために列をなしている。ウラジーミル・プーチン大統領は、卵の価格高騰について公に謝罪した。
1月12日に発表されたデータによると、2023年12月の卵の価格は前年同月比で約60%上昇した。卵危機は、ロシアが戦争資金の調達、国民感情の鎮静化、価格安定を含む経済均衡の維持といった相反する経済的ニーズのバランスを取ろうとしていることを示している。
新年の休暇を前に、卵を求める長蛇の列が見られた。シベリアや、2014年にロシアがウクライナから併合したクリミア半島の一部スーパーマーケットでは、卵を1個12ルーブル程度で販売している。ある地方の指導者は、部下へのクリスマスの贈り物として卵を贈ったこともあった。
ロシアが2014年にウクライナから併合したシベリアとクリミア半島の一部のスーパーマーケットでは、卵を1個単位で販売している(写真:ズマ・プレス)。
ソーシャルネットワーク「テレグラム」には、卵不足を心配する人や、安い卵を買うためのヒントを交換したり、ただ冗談を言ったりする人からの何百もの投稿があっという間に殺到した。
「みんなビットコイン、ビットコインと言い続けているが、私は卵に投資する必要があると言った」と別のユーザーは書いた。
プーチン大統領が、十分な量の卵を適時に輸入できなかった政府の責任を認めた後、当局は対策を講じた。ロシアはトルコ、ベラルーシ、アゼルバイジャンからの卵の発注を増やし、輸入関税を撤廃した。
当局はまた、「卵王」として知られるシルヤエフ氏が経営するトレティコフスカヤ養鶏場を含む卵および鶏肉生産者に対する独占禁止法違反の捜査を開始している。
克服するのが難しい可能性がある要因の1つは、西側諸国の制裁により製品の輸入が複雑化し、ワクチンが不足していることだ。
「ワクチン接種できるものがないので、鳥は病気になってしまうのです」とサンクトペテルブルクの獣医師は言った。「家禽は非常に弱く、群れで飼育されているため、1羽が病気になるとほぼ全員が病気になってしまうのです。」
オックスフォード・エコノミクスの新興市場担当主任エコノミスト、タチアナ・オルロバ氏によると、卵は消費者の買い物の中では比較的小さな割合を占めるが、卵の価格が急騰すると人々はそれに気づくことが多いという。
専門家は、卵のインフレはまもなく落ち着くと予測しているものの、価格は高止まりするだろう。米国を含む他の国々の動向を見ると、価格が急騰すると、インフレが安定した後も消費者心理は長期間にわたって影響を受け続けることが分かる。
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